オーガニックの価値を、ソーシャルベネフィットへ。

オーガニックの価値を、ソーシャルベネフィットへ。

社会を変える!!「食の安全」だけでは無いオーガニック給食の本当の力

IOBメンバーの秋山信子です。

2019年2月に行なわれた「全国有機農業の集い2019 in琵琶湖」で「子どもの給食をオーガニックに」という分科会に参加し、オーガニック給食が叶えてくれるのは単なる「食の安全」だけではないことを学びました。

その多様で深い視点を教えてくれた3人のスピーカーのお話をご紹介します。

有機野菜の販売者として学校給食を考える

まずは、多くの親の関心度も高い「学校給食をオーガニックに」というテーマでお話しいただいた「枚方・食品公害を考える会」(通称:やさいの会)の末永博子さんのお話から。

「やさいの会」は家族の健康を懸念した主婦たちによって約40年前に発足。きちんとパッケージされた野菜が届くのではなく、その日の朝、有機農家さんが収穫した野菜をみんなで分け合うという発想の共同購入の会です。

流通スタッフとして勤務している末永さんは、給食の現状と問題を探ります。

学校給食の背景と学校給食法

みなさん、学校給食はいつから始まったかご存知ですか?

学校給食の始まりは、明治22年、山形県の私立小学校で「食事を無料で配った」のがルーツとされています。そこから一時、戦争で中止されたりもしましたが、昭和27年に全国的に完全給食の実施が可能になり昭和29年「学校給食法」が制定されました。

しかし学校給食法では、学校給食を行なうかどうかは市町村住民みずからの判断で決定できるとされています。意外と知られていなかったと思いますが「学校給食法」では、実施を義務付けていないということ。さらに実施内容の差は、地域ごとの歴史的背景・自治体の規模と財政・学校数など様々な要因で生まれるそうです。

多くの問題を抱える学校給食の現状

末永さんが住む、大阪府交野市での学校給食の取り組みは、

・地場産食材の利用推進
・有機農産物の使用→価格面・量の確保が難しく現在は使用予定なしではあるが「大阪エコ農産物」という減農薬で比較的安全性が高いものを使用

という現状のようです。

しかしながら学校給食における問題点も多いよう。

たとえば・・・

・給食費未納
・完食ハラスメント(完食を強要する・完食主義)
・食物アレルギー対応
・食材の安全性
・給食費の値上げ
・食品ロス

などがあります。

どうしたらオーガニック給食を実現できるか?

これらの問題をクリアにし、さらにオーガニック給食を地元で実現していくにはふたつの方法が考えられると言います。

ひとつは「国をあげて」オーガニック給食への転換を進めること。具体的には、「センター方式」ではなく「自校方式」で行なうこと。もうひとつは、行政・学校・生産者・住民(保護者)など、地域全体で知恵を出し合い、価値観を押し付けるのではなく自発的な行動や気づきを促していくこと。

このように、学校給食をオーガニックにしていく取り組みにはまだまだ問題点も多いようですが、地域全体で、これらの課題に取り組み、「できない」を「どうやったらできるか」への発想に変換していくことが、実現への第一歩だと感じました。

「枚方・食品公害を考える会」(通称:やさいの会

こども園の副園長が取り組む給食改革

次に、給食に有機野菜を取り入れ、積極的に食への取り組みを保育に導入する浦堂認定こども園の副園長、濱崎心子さんの「給食を見直したきっかけから、今」というテーマのお話。

濱崎さんは、15年前に不妊治療の末、授かった命を誕生させてあげられなかったつらく壮絶な体験から、「身体を作るのは食べ物だ!」ということに気づき、園児たちの給食を変える決意をされました。

その取り組みは大変こだわりを感じるものです。

・お米は、無農薬と低農薬の7分づきか、十三穀米
・調味料は添加物の入っていない本物(醤油・みりん・砂糖・塩・小麦粉など)
・飲み物は、ほうじ茶か麦茶(牛乳やジュースは提供しない)
・味噌は、園で手作り(無農薬の大豆、麹など原料にこだわる)
・野菜はできるだけ無農薬、低農薬のものを取り入れるがすべてではない
・ハムやベーコンは、添加物の入っていないもの
・だしは、だし粉(いわし粉)を使い、まるごと摂る
・パンと麺類をやめる(できるだけお米を摂る)
・おやつは週に2回は、おにぎりにする

その他、調理法や献立にもこだわりがあります。

・日本の伝統食を基本にする
・陰陽の重ね煮
・旬の食材で季節感を大切にする

園児が体験して覚える「食育」

また、私が素晴らしいと思ったのは食を通しての保育や取り組み。いわゆる「食育」です。

毎年、卒園記念として年長児が、在園児のために豆から味噌を作るという取り組み。

さらに、「お米ができる一生を知る」ために年長組は、無農薬米の

田起こし→田植え→稲刈り→もみ摺り→脱穀→飯盒で炊いていただく

という一連の作業を体験します。

そして、有機野菜の栽培から収穫までを行ないます。もちろん種や土も有機です。

これほどまでに、子どもたちの生活や「生きていく」ということに直結した保育は、他にはないのではないでしょうか?

保育園と家庭の温度差をなくすために

それでも、すべてが上手くいっているわけではなく、残念ながら保護者の中には「こども園で良いもの(オーガニックなもの)を食べているから家では、適当でいい」という声も聞こえてこないわけではないと濱崎さんは言います。

いくら子どもが保育園などで、オーガニック給食を食べていても家庭で食べる食事が、それとかけ離れている環境だったらどうでしょうか?

そんな残念な保護者がひとりでも減るようにこちらの園では陰陽の重ね煮教室や、農薬・遺伝子組み換えの講座など保護者への食の教育も実践されています。今後も、オーガニック給食で育った子どもたちの成長がますます楽しみです!

大阪府高槻市 浦堂認定こども園

給食のもつ社会的影響力とは?

最後は「給食から広げる食改革」というテーマでお話ししてくださった京都大学農学研究科・教授 秋津元輝さんの発表から。

みなさん、子どもの給食をオーガニックにするというのは、一体どんなメリットや影響があるのか考えたことはありますか? 秋津先生は、オーガニック給食は単に、子どもたちの健康や有機農産物生産の振興に関係するだけではないと言います。では一体、どんな影響があるのでしょうか?

給食というものは、公共的な食料調達であり、量と質の面において大きな社会的影響力を持つことにあります。給食は集団食であり、トップダウンの栄養学的判断によって個人任せでは達成できない栄養摂取の改善を実現してきたと言われます。

さらに、税金で補助される学校給食は給食の食材決定も住民の関心事となり、どのような食材を大量に購入するかということがそのまま社会へのメッセージとなってしまうのです。しかし、この給食の公共調達的な特質については給食が近年になってようやく普及し始めた海外において関心度の高いものとなっていますが、日本では意識される度合いは低いとも言われていました。

ちなみに、現在イタリアの首都ローマでは、年間100万人分の給食が提供されていますが、そのうち70%は有機食材を使用しています。(国際環境NGOグリーンピースサイトより)

また、昨年12月にフランスのマクロン大統領は公約として「2022年、給食を50%オーガニックにする」としたそうです。

「食」を政策の中心において考える

FoodPolicy(総合的食政策)という言葉をご存知でしょうか? これは、「食を政策の中心に据え付ける」という考え方。

・行政と政策
・流通チェーン
・貿易
・科学技術
・労働
・消費
・栄養と公衆衛生
・健康
・生産と環境
・文化
・社会関係

などなど、人間の生存にとって一番基本的要件である「食」は暮らしのほとんどすべての領域に関連しています。秋津先生は、このフードポリシーの実現を提唱されています。そうした食のもつ総合性の中でこそ、より良い食、より良い社会を構想することが可能になります。

1991年にカナダのトロントで設立されたフードポリシーカウンシルは「食と農の未来会議」と言われています。

この協議会は、北米を中心に数を増やしており、農家、食料の卸売業者、食料品の店主、食の公正を求める活動家、料理店店主、食の安全に関わる役人、公衆衛生局で働く人までが、地域のフードポリシーカウンシルのメンバーとなり、食に関する様々な緊急課題について、議論します。

地域の住民がそれぞれ異なったものを持ち込むことでお互いの望みを満足させる対策を立案することを容易にし、総体的な変化に向けての一助になっています。

オーガニック給食普及の意義

日本においても、持続可能な食と心豊かな暮らしのために、オーガニック給食が国内の様々な社会問題を解決する可能性を秘めていると強く感じました。

特に我が国の食に関する緊急課題である

・地域農業の衰退
・農業資源の荒廃
・農薬・化学肥料への依存
・貧困と食の格差拡大
・中食と外食の拡大
・孤食、個食のひろがり
・身近な食品店
・商店街の衰退
・伝統的食文化の断絶
・食の不透明性の拡大
・国及び地域の食料自給率の低迷
・食を通じた地域の魅力づくり
・食へのモラル低下

など、日本もオーガニック給食をテコにして様々な社会問題に取り組む必要性が今、もう目の前に来ていると確信できたことが今回の最大の学びとなりました。

我がIOBも、食の安全や健康という側面だけではなく、次世代のための、社会変革に携わっていける活動にしていけるよう今できることを精一杯やっていきたいと思います。

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