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経済成長か温暖化か?

京都議定書で、途上国との対立を生んだ課題「経済成長と温暖化」は、切っても切り離せない課題の時代があった。産業革命以降、人間は石油・石炭などの化石燃料を燃やし、エネルギーをとり出し経済成長し続けてきた。その結果、産業革命以前に比べ大気中のCO²濃度は40%も増加した。それに伴い、地球の気温は上昇し、気候変動は人間生活だけでなく、自然の生態系に様々な影響を与えている。

 

地球の温度上昇を表すグラフ出典)IPCC第5次評価報告書   全国地球温暖化防止活動推進センター https://www.jccca.org

 

2019年東京の真夏日は年間46日にも及んだ。大阪では68日。那覇では87日も観測された。このまま温暖化対策を取らなかった場合、21世紀末には年間約103日、1年の三割近くが真夏日となることが予想される(環境省・気象庁の発表より)。教科書では、日本は「温帯湿潤気候」と記載されているが、世界の気候変動を監視する米国海洋大気庁(NOAA)では「熱帯」の区分になっている。

もう待った無しの現在。地球温暖化はわれわれ人間社会や生態系にどんな影響を及ぼし、どんな現象を起こしているのかレポートし、「最後の選択ができるわれわれ世代が今すべきこと・できること」を考えてみる。

そもそも温暖化の原因は?温暖化のメカニズム

温室効果ガスは、まるで悪者のように論じられているが、そもそも温室効果ガスがなければわれわれの生命は維持できない。太陽放射により地表が温められ、一部は紫外線として宇宙に放出されるが、温室効果ガスがあることにより一部のエネルギーは地球の大気に閉じ込められることにより、地球は生命が維持できる温度を保つことができるのだ。もし、温室効果ガスがなければ、火星のように、入ったエネルギーはそのまま宇宙に放出され、生物が存在できない星となる。

メカニズム
太陽からのエネルギーで地表が温まる

地上から放出される熱を温室効果ガスが吸収・再放出

地表が温まる

ここで、適度な温度を保ち、生物の生命維持ができていた。しかし、必要以上にCO²を中心とした炭素を放出してしまう社会構造になってしまった現代には続きがある。

メカニズム
太陽からのエネルギーで地表が温まる

地上から放出される熱を温室効果ガスが吸収・再放出

地表が温まる

過度の炭素排出により、温室効果ガスの濃度が上がる

地表の温度が上がり、温暖化となる

石油・石炭などの炭素放出エネルギーに依存し、経済発展をしてきた産業革命以降のわれわれの社会。それが今の温暖化を生んでいるのだ。

 

地球温暖化のしくみ地球温暖化のメカニズム 全国地球温暖化防止活動推進センター 

 

近年の温暖化の影響と現象

日本の近年の大型台風

2018年9月4日、日本の大都市大阪を台風21号がのみ込んだニュースは記憶に新しい。最大瞬間風速58.1mの台風は、木をなぎ倒し、車を吹き飛ばし、大型船も漂流。関西国際空港に続く橋に漂流した大型船が衝突。停電と浸水の中、関西国際空港に3000人の利用客を閉じ込めた。

 

千葉の台風の様子著者撮影

 

2019年9月、千葉県を中心とした関東各地を台風15号が襲った。特に被害のひどかった千葉県は、各地で家屋損壊・浸水・インフラの停電停止など甚大な被害に見舞われた。千葉県は海と山に囲まれた土壌豊かな東京の胃袋の役目を果たす農業・漁業が盛んな土地。今回の大型台風で農林水産業の被害総額は約453億円にも上った。

 

2019年千葉台風様子著者撮影

 

記者も取材とボランティア活動に何度か足を運んだが、地形から、住居が点在するという特徴があるため、インフラの復旧や家屋の被害修復に時間を要することがすぐに推測された。台風15号の爪痕が癒えない状態の中、そこに10月台風19号、台風21号立て続けに暴風雨に見舞われ被害が拡大した。台風15号・19号・21号による被害は、住宅全壊約300棟、半壊3300棟、一部損壊57000棟にも及んだ。2020年の現在も、復旧・復刻作業は続いている。

 

2019年千葉台風の様子著者撮影

 

温暖化がもたらした世界の被害の一部

●サウジアラビア北部
2019年10月25日から28日、サウジアラビヤ北部砂漠地で豪雨。7名が死亡した。

サウジアラビア温暖化の影響洪水dailypakistan.com.pk

 

●2019年10月23日イタリアロッシリーネ 記録的豪雨

イタリア温暖化影響thesun.co.uk

 

●2019年10月23日スペイン カタロニア記録的豪雨により6名死亡

温暖化の影響スペインの豪雨gulftoday.ae

 

●2019年6月から10月インド 長期的モンスーン1673名死亡

温暖化インド洪水の様子straitstimes.com

 

●2019年8月中国 台風9号死者32名行方不明16名

温暖化影響2019年9月台風の様子AFP

 

●2019年8月アマゾン 森林火災

森林火災の火種は自然発火と人為的要因のふたつがある。どちらにせよ、温暖化により高温で乾燥した風がフェーン現象により一気に燃え広がり森林火災と発展する。2019年アマゾンで起こった森林火災は、政治的な人的被害であった。温暖化した空気の乾燥が火災終息を遅らせた。地球の肺の役割を担うアマゾンは世界のCO²を25〜30%吸収すると言われている。今回の森林火災により、その働きは大きく低下。2億2800万トンのCO²が排出された。

アマゾン温暖化の影響森林開催ナショナルジオグラフィック

 

●2019年6月10日11日北カリフォルニア海 熱波による海水温度の上昇
海水温度の上昇で、海の中でボイルされたムール貝が打ち上げられた。

カリフォルニア温暖化の影響、打ち上げられたムール貝たちアル・ゴア Clime change セミナー資料より

 

●2019年8月アフリカ サバンナ地方の森林火災
アマゾンに次ぐ第二の「緑の肺」と言われる中央アフリカの今後民主共和国・ガボン・コンゴ共和国・カメルーンにまたがる330㎢の森林が消滅。原因は焼畑農法によるもの。温暖化による空気乾燥がひどく、消火活動に支障をもたらした。

温暖化の影響サバンナの火事Toa55 / Shutterstock.com

 

●氷の融解現象(一部)
2019年7月下旬〜8月上旬グリーンランドの氷床で異変が拡大、流出加速

温暖化の影響氷河融解ナショナルジオグラフィック

 

●スイス ローズ氷河融解が加速

温暖化の影響スイスの様子Reuters 上:2019年 下:2009年

 

2019年の世界の異常気象分布図

世界の異常気象分布図国土交通省気象庁

 

豪雨や大型台風は温暖化が原因と言える。われわれが炭素に片寄ったエネルギーを放出しながら生活・経済活動を行うことは温室効果ガスを出し続けるということになる。それにより地球の温度は上昇し、海の温度も上昇、空気中の水蒸気量を限界まで増やしてしまう。水蒸気が限界に達し、豪雨や大型台風となる。

陸を見てみると、温暖化による温度の上昇は大地の水分を奪い、乾燥させる。森林の乾燥が落雷や人為的原因により着火すれば、山火事の規模や頻度を増やす。森林は、CO²を吸収してくれるいわば「肺」のような役割を担うが、その損失が温暖化を加速させている。

北極の氷の現象を検証してみる。温暖化により氷土が溶ける。氷土の中にはCO²の21倍にも温室効果を有するメタンという温室効果ガスを含んでいる。長年、氷土として氷の中に保たれていたメタンが、氷土の融解によって大気中に放出することにより、温暖化が加速されるのである。

この今まで、地球の歴史的に保たれていたバランスが崩壊することにより、温暖化が急激に加速。様々な影響が今まさに起こり始めている。

数値目標やきれいごとスローガンでは問題解決しない
京都議定書からパリ条約へ

足並みの揃わなかった京都議定書の結果

国連気候変動枠組み条約(United Nations Framework Convention on Climate Change: UNFCCC)は1992年5月に国連総会で採択された。この条約の究極の目的は「温暖化防止のための大気中の温室効果ガス(二酸化炭素・メタン・一酸化窒素・HFCs・PFCs・SF6)の濃度を安定化させること」と定義。

1997年にCOP15京都議定書第15回締約国会合(Conference of the Parties serving as the meeting of the Parties to the Kyoto Protocol: CMP15)で定められた「京都議定書」は、先進国の温室効果ガス排出量について法的拘束力のある数値目標が設定された。先進国全体で2008年から2012年までの期間に、削減基準年の排出量から5.2%削減することを約束した。

条約参加国に、発展途上国の参加がなされていなかったが、EUや日本など多くの国が達成目標の数値をクリアした。しかし、CO²多量排出国であるアメリカや、脱退したカナダは増加した。また、中国やインドなど、多量排出国に削減拘束はなく、過度に増加。地球全体として、温室効果ガス削減への影響は大きな成果を上げられないお粗末な結果となった。地球温暖化は加速し続けた。

 

温暖化の図原初データの提供:JAXA/NIES/MOE

 

パリ協定

2015年パリで開かれたパリ協定、第2回締約国会合(Conference of the Parties serving as the meeting of the Parties to the Paris Agreement: CMA2)は、「京都議定書」の後継である。温室効果ガス削減に関する国際的枠組みを話し合う「国連気候変動枠組条約締約国際会議(COP)」で合意された。2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みは、「京都議定書」では合意できなかった途上国や、CO²排出世界第1位の中国と第3位のインドの参加国となったことが注目された。それぞれに2020年以降の「温室効果ガス削減・抑制目標」を定めることを求められている。

パリ協定の発行条件

  • 55カ国以上が参加すること。
  • 世界の排出量のうち55%以上をカバーすること。

パリ協定における長期目標

  • 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする。
  • できる限り早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスを取る。

パリ協定の実地日程である2020年が始まった。国際社会ではIPCCの特別報告書『1.5℃の地球温暖化』を2018年に発表以来、1.5℃を新たなグローバルスタンダードと捉えるようになった。では数値目標は決まったものの、われわれは何をすべきか。日本の長期戦略は将来の世代に負担を先送りすることなく、現世代の責任として、1.5度告別報告書を反映する目標と2050年に脱炭素化するビジョンを掲げる必要がある。それは、政府の政策に加担するだけでは成し遂げようがない。行政・民間・生活者であるわれわれ一人一人の問題として、しかと受け止め、行動していく必要がある。

数値目標を具現化し行動していくこと

1. 「主力電力」を自然再生エネルギーへ

自然再生エネルギーへの関心と需要を高めていく教育とシステムが必要となる。

2016年、電力の自由化が始まり、自由に電力会社を選べるようになった。今、自然再生エネルギーへシフトしていくことが、急務であるにもかかわらず、多くの企業・家庭では既存の電力会社を使用している。今、選択に見直しがまさに必要である。

2. 自然再生エネルギーへの技術強化と保護

公的資金を導入し、自然再生エネルギーの施設強化と技術革新へも補助金制度を設ける必要がある。消費者であるわれわれは、その動向に敏感になり、選択・応援していくという姿勢が必要とされる。

並行して、消費者として国の自然再生エネルギー政策の支援・自然再生エネルギーにシフトする企業になる、または応援する。

3. 国内石炭火力のフェーズアウト

原子力発電所の再稼働の目処が立っていない現在、火力発電に特化し、ガス・石炭で賄っている日本の電力。現在約4300万kWの石炭火力発電所に頼っている。福島第一原子力発電所の事故以降、近年に稼働を開始し始めた石炭火力発電は1600万kWにも及ぶ。しかも、安倍政権はこれから石炭火力発電所を50棟建設予定をしており、世界の動向と真逆の政策を実現しようとしている。

自然再生エネルギーの強化・消費者の選択と並行して、その情報に敏感になり、自然再生エネルギーを推進する政治家に投票する。

4. 先送りイノベーションからの脱却

「革新的技術」「非連続なイノベーション」自体は有用であるが、今やるべきものが先にある。省エネ基準の強化とそれに伴う企業・消費者の選択教育である。今やるべきことを先延ばしにするべきではない。もし、政策や教育が気候変動の速度に間に合わなかったとしても、われわれ消費者の知的好奇心・レベルを各々があげ、繋がり、各自が学び、選択していく必要がる。

5. 脱炭素ビジネスを促進するための金融環境整備

事業主側が気候変動関連リスクの分析・それらを織り込んだ戦略目標など、情報開示を促進し、その企業を応援していく必要がある。それに伴う資金などは、税金の免除など行政側の法設備と金融環境整備を求む。

デザイン思考という考え方

デザイン思考、これは日本の国の政策や世界の目標という大きな枠組みに囚われず、企業経営や個人の人生にも当てはまる考え方なのではないか。中長期に物事を見据え、今をデザインしていく。どんな人生にしたいのか、どんな社会に己がいたいのか、どんな世界を次世代に残したいのか、どんな地球を次世代に残したいのか、デザインし、行動に落として今を選択していくものの考え方である。そのためには、近視眼的にならず、大きくものを捉え、一つひとつ小さな選択に配慮し、人生も社会も運営していく思考と目線、生きる力が必要な時代になったと思う。

戦後の高度成長期、産めよ育てよ、生産せよ消費せよとGDPの伸びに特化してきたこの日本は高齢化社会を迎え今、つぎの選択を求められている。

シェアリングエコノミーという選択

一挙集中型の競争社会に限界を感じ始め、つぎの資本主義のあり方が問われる時代に入った。一人勝ちの物理的成長から脱却し、循環型経済=サスティナビリティに成長し、ともに生きてゆく社会構造・経済成長が必要とされる。企業も個人も社会の一部であるという認識を持ち、様々なサービス・生産・消費・労働という経済活動をシェアしていくこと。まさにシェアリングエコノミーが必要となってきているのではないか。

AIの発展により、多くの職種が消滅し始めている現代社会。人間だからこそできることは、人と人が繋がり、人と自然とが共存共鳴できる選択をしていくことは、つぎの世代に残すものを見抜く目を作る。自然を無視し、活用のみに特化した時代は終わりを遂げなければならない。エネルギー効率をあげ、自然再生エネルギーを選択し、人間にしか感じなれない幸せ度をあげるには、われわれが自然の一部であり、一部でしかないと認識し経済活動をしていくこと。消費生産を減らし、物と人を大切に十二分に活用・シェアしていくことが実は「永遠に続く幸せの資本主義」を確立するのではないか。

地球そのものを失ってしまったら、経済成長も元も子もない。地球は、警告を出し続けている。われわれ世代の選択が、今、まさに試されているのである。

 

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