IOBは、よりよい地球を未来へと引き継ぐため、オーガニックが持つ「社会的価値」を広める活動を行っています。その中で、未来を担っていく次世代への教育も重要な要素と考えてきました。そしてこの度、IOB初の学生向けプログラムが始動。

今回は、2020年9月15日(火)に公立高校にてオンラインで実施されたIOB代表レムケなつこによる講演『環境、社会、次世代にとっていいオーガニックの秘密』のレポートをお届けします。

Contents

講演『環境、社会、次世代にとっていいオーガニックの秘密』について

本講演は、2020年 9月15日(火) 広島県立庄原実業高等学校にて実施されました。
対象となったのは、「生物生産学科」「食品工学科」「環境工学科」「生活科学科」の1年生約100名。

庄原実業高等学校には、「農業と環境」という授業があり、先に述べたどの学科も、はじめに栽培プロジェクトについて実習をしながら学びます。1年生でこの「農業と環境」そして、「学科基礎」と呼ばれる各学科の基礎的な内容を含んだ単元を経て、2年生の「農業実践研究」という授業に発展し、3年生の「課題研究」において集大成となる流れで教育を進めているため、どの学科もオーガニックの原則と関わりがある、と先生方にご判断いただき、今回の講演を企画するに至りました。

講演概要

  • タイトル:『環境、社会、次世代にとっていいオーガニックの秘密』
  • 内容:
    ①「農」と「食」から見る世界の環境問題
    ②オーガニックの欧州定義(オーガニックセクター国連IFOAMが提唱する「有機農業の原理」)について
    ③オーガニックがもたらす環境、社会、次世代へのベネフィット
  • 対象: 1年生全員
  • 実施高校:広島県立庄原実業高等学校

※コロナ感染症の影響を考慮して、今回はオンライン形式の講演となりました。

レムケなつこが次世代に伝えたいオーガニックの概念とベネフィット

高校生向けオーガニック講演会

 

今回は、園芸や畜産に関わる実質的な農業の技術を学ぶスタート時期にオーガニックの概念について知ることにより、自然生態系の保全および持続可能な農業について、より包括的に考える機会を持ってもらいたいという想いから、学生向けプログラムとして講演内容を構成しました。

私たちにとって身近な食がいかに様々な環境・社会課題と結びつき、社会・地球・次世代に働きかけていく力を持っているかを、最新エビデンスに基づいて分かりやすく説明しました。

2014年国連は、「環境への悪影響は、高度な集約型農業システムが限界にきていることを示している」と世界食料農業白書の中で述べ、現代の農業のあり方を批判しました。実際に、現代の食の生産スタイルは、気候変動、森林破壊、土壌劣化、水不足、生物の絶滅、土壌・水・大気汚染など、様々な環境問題の要因となっています。

しかし、食の仕組みは問題の原因であるだけではなく、解決策にもなりえるのです。

有機農業で世界は変えられるか?(質疑応答)

講演の後半で、環境工学科の生徒さん2名が素晴らしい質問をしてくださいました。
ここではその内容を簡単にご紹介します。

【質問1】「オーガニックに関連して、今からぼくたちにもできることは?

レムケの回答:
オーガニック製品を購入すること、そして消費者として有機農家や産業を応援すること。
広島には有機農家さんが40人ほどいらっしゃいます。ネットで検索できるのでそこから直接お野菜の宅配ボックスを購入できるようにご両親に頼んでみてください。私たち消費者の買い物が市場を変え、社会を変えます。

 

【質問2】「農業で世界は変えられますか?

レムケの回答:
農業で世界は変えられると私は本気で信じています。
その理由として、まず「農」と「食」に起因する問題をいくつか挙げます。
  • 生物多様性喪失の60%は農業に起因
  • 温室効果ガスの全排出量30%は農と食からの排出
  • 飲み水である淡水の70%は食糧生産のために消費
  • 食べられる食品の3分の1は廃棄されている
  • 絶滅危惧種は増え、昆虫や鳥類は大量死している

その中で、自然災害により世界中の人たちが災難に遭い、また安全な水が入手できず、毎日4900人の子どもたちが死に至り、飢餓で6億人以上の人々が苦しんでいます。
「農」や「食」のあり方が変われば、地球の運命を変えることは可能だと考えています。

レムケなつこよりメッセージと謝辞

農業は地球上で起きている様々な環境問題・社会課題の最大要因の一つと言われています。しかし、その諸問題の解決策にもなるのが農の世界。農業高校の生徒たちは地球の未来を舵取りする極めて重要な学問を学んでいると私は考えています。
今回講演させていただいた広島県立庄原実業高等学校の生徒の中にも、将来農業に関わることで、地球環境に直接影響を与えるような人物になる人もいるでしょう。⠀

日本の未来を作る次世代の若者たちと、真にサステナブルな農業について一緒に考える時間をいただけたことは本当に貴重な体験でした。

参加してくれた一年生のみなさん、司会を務めてくれた佐々木さん、豊原さん、マイク係の小滝さん、企画オーガナイズしてくださった堀内先生をはじめとする先生や職員の皆さまに心から御礼申し上げます。

参加した生徒の感想

オンライン講演会に参加された生徒たちの感想から一部ご紹介いたします。

自分たちが生きていくために必要な農業が、地球温暖化の原因になったり、健康に被害を与えたりしているということを知って驚きました。自分の周りにある食物を作るために、色々なことを犠牲にしているのかと思い、オーガニックという取り組みはこのマイナスな現状に歯止めをかけるためにあることが分かりました。
今回オーガニックについての話を聞いて、自分は農業で世界を変えたいと思いました。オーガニックについてもっと知りたいです。
災害などが起こると農業が一番被害を受けていること、飲み水(淡水)の約70%が農業で使われているということを知りました。オーガニックは色々な形で私たち人や動物、植物を幸せにするんだなと思いました。
講義を受けるまえは、オーガニックをとても難しいものと考えていたが、「人、動物、植物すべての命を幸せにする仕組み」と学び、とても分かりやすく、もっと知識を深めたいと思った。
地球温暖化による自然災害で被害を受けている私たちは、被害者というだけではなく加害者でもあることを知り驚きました。自分たちのせいで、動植物や地球なども被害を受けていて悲しくなりました。これからはオーガニックで世界を変えていけるよう、食べ物をロスしないようにしたり、有機のものを食べるようにしたりして、自分にできることをしっかりと取り組んでいきたいです。
講義を受けて、改めてオーガニックの意味や重要性を知ることができました。オーガニックには多くの救える命と救える人生があるのだと分かりました。今の農業は環境問題の被害者であり、加害者であるということを忘れないようにしたいと思います。
世界には安全な水を飲めない人が20億人いること、飢えに苦しむ人が6億人いることを知りました。でもオーガニックが人や動物、植物すべての命を幸せにする仕組みということを学んだので、これからはスーパーなどでもオーガニック食品を探してみたいと思います。
私たちが生きるために食べているものは農業から作られているけれど、その農業が環境に被害を及ぼしている。それを変えるためにオーガニックという考え方は大切だと思った。みんなでオーガニックを推奨していかないと地球の未来、貧しい人たちの人生を変えていけないので、この考えが広まって欲しいと思う。
農業の仕方で、地球温暖化を進ませたり、止めたりすることができるということを知りました。私は地球温暖化を止めたいので、オーガニックのものを買うなど、一つひとつ努力していきたいと思いました。
普段の生活でも「オーガニック」と聞くことがあったり、オーガニックの商品を見ることがあるので、これからは積極的にオーガニックのものを選んで使いたいと思いました。自分たちで生き物の幸せを守りたいです。

 

IOBでは、今後も次世代教育の一環としての講座・講演を実施いたします。プログラムは、対象やご希望によりカスタマイズが可能です。学びたいという教育機関、その他団体の方には学生向けとしての対応をいたしますので、ご相談ください。

 

講座・講演問い合わせ先はこちら
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