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そもそも、オーガニックの意味って何?
- 人や環境にやさしい
- 農薬や化学肥料を使わない
- 健康的なイメージ
など、多くの人がこのように捉えているのではないでしょうか。
「人体にやさしい」や「環境保護」だけでないオーガニックの立体的な姿、真価、可能性について、国内での理解と認知はまだまだといったところが現状です。今回「オーガニックって結局、何?」という方へ、分かりやすく答えました。
オーガニックはビジネスとしてではなく「社会運動」として始まった
オーガニック発祥の地と言われるヨーロッパ。
1920年代、化学肥料や農薬に依存する近代農業が導入され始めると、農業の化学化に異を唱えたヨーロッパ中の農民が、バイオダイナミック有機農法を提唱したオーストリア人哲学博士ルドルフ・シュタイナーをセミナー講師として招き、当時のドイツ領に集います。この農民集会がのちに『オーガニックムーブメント』と呼ばれるグローバルな社会運動の始まりだったと言われています。
1940年代後半、戦後の食糧難などを背景に、安価で効率よく大量に生産されることが食料生産にとって最も重要な要素となっていきます。その後近代農業が本格化すると、レイチェル・カーソンの著書「沈黙の春」(1962年)に代表されるような化学肥料や農薬による環境汚染、健康被害が世界中で露呈され始めます。ここから、当初小さな集会だったものが、より多くの個人・企業・組織を巻き込み、いわゆる『オーガニックムーブメント』へと発展していきました。
この社会運動の最たる成果として1972年に実を結んだのが、IFOAM(国際有機農業運動連盟、以下IFOAM)という現在ドイツ・ボンに本部をもつ国際機関の設立です。現在、IFOAMはEUに政策提言やロビー活動を行うなど、業界では有機の国連とも言われるほど多大な偉力を持つ団体にまで成長しています。
IFOAMの主な活動のひとつは、各国政府や世界の認証団体がオーガニック基準を作る際に基礎基準として参考にするガイドラインの策定です。日本の有機JAS規格は、もうひとつの国際的な有機基準であるコーデックスガイドラインをベースに作られていますが、実際には、コーデックスガイドラインもIFOAM基準をもとに策定されています。そのため、日本の有機規格もまた、IFOAM基準に準拠して定められたものであると言えます。
オーガニックの真価がわかるようになる「有機農業の4つの原理」
この IFOAMが、オーガニックが依拠すべき基本法則として2005年に策定したものに、「有機農業の4つの原理(Principles of Organic Farming)」があります。それまで混沌としていた世界のオーガニック定義を統一させたのがIFOAMのこの原理です。これを知ると「人体にやさしい」「環境保護」だけでないオーガニックの真の価値や様々な可能性が見えてきます。
では、この4つの原理をそれぞれご紹介していきます。
4つの有機農業の原理
1.「健康の原理」
IFOAMは、「健康」のことを「身体的・精神的・社会的・生態的に満たされた状態である」と定義しています。つまり健康と言うのは、ただ単に「病気ではない」状態を指すものではないのです。
この「健康の原理」では、土・植物・動物・人・地球の健康は別々に分けては考えられないと主張されています。どういうことかと言うと、人や動物の健康は、健康な植物があって成り立ち、その植物が健康に育つには、健康な土や水などの自然環境があってのこと。私たちの周りのものがすべて健康でなければ、私たち自身の健康が成り立たないという考え方がそこにあるのです。
この観点から有機農業では、人・動植物・地球の健康を害する危惧のある化学肥料、農薬、動物用薬品、食品添加物の使用はできる限り避けるというのが方針になっています。
2.「生態的原理 」
ここでの「生態的」とは「生態系」のことを指しています。生態系とは、生物とその生息地をひとつの閉じた空間として捉え、その中で動的な『相互作用』がある状態のことを言います。
たとえば、一本のニンジンが育つ土壌の一画を切り取って考えると、この環境には何十億、何百億という数の微生物や土壌動物が住んでいて、互いに生き残るために必要になる栄養素をギブ&テイクし合っています。このように、区切られた空間の中で生き物同士の『相互作用』がある状態のことを「生態系」と言います。
「生態的原理」では、有機農業はこういった生態系のバランスに沿って営まれるべきであり、農業の営みに無理やり合わせて生態系を壊してしまってはならないとされています。生態系にとって異物となる資源の投入は最小限に抑え、すでにある資源を生態系の中で循環させることが有機農業では大事なのです。その土地に昔から生息していた在来品種を育てることが有機農業で強く推奨されているのもそのためです。
そして、この原理の中にもうひとつパワフルなメッセージがあります。それは「自然環境は、生態系に生きるみんなで保護しよう。その代わりにその恩恵をみんなで享受していこう」という力強いメッセージ。
「みんなで守り、みんなで分かち合う」
私も大好きな、オーガニックの美しい世界観のひとつです。
3.「公正の原理」
「公正の原理」の意味する「公正(=フェアであること)」とは、「人と人および、人と他の生き物との関係のなかで、公平・ 尊重・正義・世界観を共有することによって初めて成り立つ概念である」と IFOAMは定義しています。
この3つ目の原理では、有機農業に関わるすべての人が「公正な関係で結ばれ、すべての命が質、量ともに十分な食事を摂り、よりよい生活が提供されるべきだ」と主張されています。ですから、オーガニックは貧困撲滅と食料主権(注1)に貢献し、フェアトレードを推奨し、児童労働を徹底的に禁止する、そういう側面を持っています。
また、人だけではなく、動物も公正な機会や条件が与えられるべきだとされています。動物らしく自然体で健全でいられることが保障されるべきとしています。ここは、動物福祉の考えのベースになっているものです。オーガニックコスメ認証団体が動物実験を禁止しているのもそのためなのです。
「公正の原理」のさらにすごいところは、今生きる私たちだけがフォーカスされるのではなく、私たちの子どもの世代、さらにその子どもたちを超える次世代の人々にまで美しい自然を残していく、資源や尊い命を託していく必要があると謳っていることです。
(注1)何を育て何を食べるかを決める権利を生産者自身が有することを指す。農産品の企業支配が強まった結果、人権侵害と貧困は拡大しているという主張に基づき生まれた言葉。
4.「配慮の原理」
有機の世界でも、生産性の向上や効率化を目指すことは「悪」ではなく、むしろ当然のことのように奨励されてきました。その証拠に、EUでは、有機農法でいかに生産性を上げることができるかといった研究が長年に渡って行われてきました。
私自身もドイツの大学院のリサーチファームで、効率よく雑草管理をするにはどうしたらいいか、その技術の比較研究をしていたことがあります。ただし、ここで使用される技術やその技術開発が「決して誰かを苦しめるものではない、そういう技術を選びましょう」「そういう技術開発をしていきましょう」というのがこの「配慮の原理」の趣旨になります。なぜこういった配慮が必要かというと
- 現在人類が知り得ている生態系や農業の知識はごく一部でしかない
- 実はとんでもない未知の世界だから
- 完全に理解されていないものに対して、十分に配慮しよう
- 使用される技術が誰かの健康や幸せを脅かすかもしれない
そういったリスクを誰かに負わすのではなく、すべての命がよりよく生きられる技術のみ使用する。これが有機農業が目指す基本姿勢です。有機農業で遺伝子組み換え技術が徹底して排除されているのは、この技術によって何がもたらされるか、その多くはまだ分かっていないからなのです。
オーガニックとは、関わる命すべてが幸せであれる仕組み
日本ではオーガニックと聞くと、単に製品を受け取る私たち消費者にとっていいものだと思われがちです。「安心安全、健康によくて、肌にやさしい」そんな理由でオーガニック製品を買っている人が多数派ではないでしょうか。
しかし、オーガニックの本当の可能性はもっともっと深く多面的なもの。
どんな製品も、『作り手→売り手→買い手』といったステップを踏んで、私たち消費者のもとに届きます。オーガニックの世界が目指すのは、この行程に関わる人、動植物、微生物などの目には見えない小さな命、次世代のまだ見ぬ命、自然環境まで含めて、すべてが公正な関係で繋がり、その健康が確保され、生態系のバランスに沿った生産活動が技術配慮がなされた状態で営まれることです。
つまり、オーガニックというのは、時や場所を超えて関わる命すべてが幸せである仕組み。
オーガニック製品を買うことって、未来や世界に幸せの種をまいているようなもの。
「オーガニックが広まれば、この世界を変えることができる」そう私は信じています。
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オーガニックについて、下記動画でも視聴できるようになりました。
「オーガニックの定義」について、IOB代表レムケなつこがわかりやすく解説しています。
You Tube での視聴はこちら
https://youtu.be/jIuMF-wf7wc