近年、オーガニック食品が「体内に蓄積する残留農薬を減少させるのに有効である」ことが世界の研究で明らかになってきました。
この記事では、農薬の健康被害の一つである「ガンとの関係」、そしてそれに対する「有機食品の有効性」をアメリカで発表された複数の学術論文を元にご紹介します。

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世界で最も使用される除草剤成分「グリホサート」

多面的なオーガニック食品のベネフィット

「グリホサート」は世界で最も使用される除草剤の主成分です。アメリカの農薬・種子メーカー最大手と呼ばれたモンサント社や現バイエル社が開発した「ラウンドアップ」という除草剤に使われる化学薬品として知られています。1974年に同社がアメリカで販売を開始すると瞬く間に世界中に広まりました。

1996年以降グリホサートの使用量は急激に増加しています。ちょうどその頃、モンサント社は「ラウンドアップレディー」と呼ばれる商品も開発・販売し始めました。

「ラウンドアップレディー」というのは、大豆や綿花、トウモロコシのGMO*種子のことで、遺伝子操作により除草剤「ラウンドアップ」への“耐性”を持ちます。このように、モンサント社は農薬に負けない強い種子も同時に開発しています。

同社がこの除草剤とGMO種子をセットで販売してきたという背景から、今日までグリホサートは主に遺伝子組み換えのトウモロコシ、綿花、大豆に使用されています。さらに、アメリカでは、公共の公園、道路、庭などにも散布されてきました。

近年、各国政府、研究機関、国際機関などにより、農薬成分グリホサートの健康への影響に関して評価・調査が行なわれ、その安全性が議論を呼んでいます。実際に、世界ではグリホサート販売の規制強化が進んできました。

例えば、EUではフランスが2019年に一部の製品の販売を禁止し、ドイツでも2023年の年末までにグリホサートの使用を段階的に禁止することを決めています。

一方、日本ではグリホサートの規制緩和が進んでおり、世界の流れと逆行する傾向にあります。

日本の農民連食品分析センターが2019年に行った調査によると、東北、関東、関西、九州で提供された学校給食のパン14製品中、12製品からグリホサートが検出されています。グリホサートが検出されたパンの原料は輸入小麦で、グリホサート検出が認められなかったのは、地場産小麦と米粉を使用したものの2製品のみでした。

*GMOとは、Genetically Modified Organism(遺伝子組換え作物)の略称。

グリホサートによる健康被害「がん」

有機食品で体内の農薬が70%減少

グリホサートの健康被害として、よく知られているのは「がん」です。これについては、世界保健機関(WHO)の一機関である権威ある国際がん研究機関が、2015年にグリホサートを「人に対して恐らく発がん性がある」という成分に分類したことが非常に有名です。

2019年、米ワシントン大学の研究者らは、グリホサートとがんの一種である「非ホジキンリンパ腫」の因果関係について調査した過去の研究論文を検証し、グリホサートにさらされると、がんになるリスクが41%増大することを明らかにしています。

研究対象となった非ホジキンリンパ腫は、血液細胞に由来するがんです。日本人が診断される悪性リンパ腫の90%以上が、この非ホジキンリンパ腫であるという報告があります。

研究チームの検証した調査の中には、散布許可を持つ農薬使用者54,000人以上を追跡調査したものもあり、「がんとグリホサートに因果関係があることは明らかである」と結論付けています。

また、主成分がグリホサートの除草剤「ラウンドアップ」の発がん性をめぐって、アメリカでは12万件以上の訴訟が起きました。2020年にモンサントの親会社バイエル社が敗訴し、最大109億ドル、日本円で約1兆1600億円を原告らに支払うと発表しています。

有機食品で体内に残留した農薬7割減少

有機食品で体内の農薬が70%減少
学術誌『Environmental Research』に2020年に掲載された学術論文によると、オーガニック食を摂取することで体内に残留するグリホサートの量が大幅に減少することが明らかになっています。この結果は、環境保護団体「地球の友」に所属する研究者らが、アメリカに住む4家族に対して行った調査が元になっています。

被験者は計16人で、そのうち9人は4歳から15歳までの子ども、それ以外は成人です。期間中被験者は5日間オーガニックではない一般的な食事をし、6日目から10日目までの5日間は有機食品だけを摂取しました。その間毎日尿サンプルが採られ、全部で158サンプルが集められ分析されています。

結果は、一般的な食事をした5日間は、全体の93.7%に及ぶサンプルからグリホサートが検出され、さらに子供のほうが大人よりも濃度が高くなることがわかっています。

ところが、調査6日目に食事を有機食品に切り替えると、3日以内に尿中のグリホサートの濃度が急速に低下し、平均70%以上も減少するという結果が出ています。
当調査チームは、グリホサートを含む農薬成分への曝露から子どもたちを守る重要性を再確認し、グリホサートの影響を減らすには「食事を有機食品に切り替えることが有効である」と指摘しています。

 

オーガニック食品が健康にもたらすベネフィット

多面的なオーガニック食品のベネフィット
有機食品と農薬の関係については、「農薬散布の有無」など、その生産過程だけに関心が集まりがちですが、オーガニック食品が健康にもたらすベネフィットは多面的です。有機食品を摂取すること自体にも大きな意味があります。

日本では手に入らないオーガニック情報

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