まだまだ日本では馴染みのないビオホテル (Biohotel)。ドイツ語でオーガニックを意味するビオ(Bio)をとって名付けられた気候中立なオーガニックホテル通称ビオホテルのことを皆さんはご存じですか?

今回は、本場ドイツのビオホテルの魅力について迫りたいと思います。

 

(トップ写真提供:Biohotel Mattlihüs(ビオホテル・マトリヒュース))

ビオホテルとは

ビオホテル(タンナーホフ)ビオホテルTannerhofの客室廊下(写真提供:四角大輔

 

ビオホテルでは、衣食住の様々な側面でオーガニックでエコなものが取り入れられ、温室効果ガス排出量に決まりがあるなど、その多くが厳しい基準で定められています。基準を管理するのは、ビオホテル協会(Verein BIO HOTELS)というオーストリアの民間団体。

本協会が誕生したのは2001年。意識の高いオーストリアのホテル経営者や生産者らが集い、ドイツのオーガニック民間認証団体Biolandのサポートを受けて発足しました。

2020年7月現在、本協会よりビオホテル認証を受けているのは、ドイツ、オーストリア、スイス、イタリア、ギリシャ、スロベニアの6カ国にある80軒ほどのホテルで、その半数以上はドイツにあります。

ビオホテル協会によれば、「オーガニック」ホテルであることがビオホテル宿泊の決定要因だったと70%の宿泊客が回答しており、ヨーロッパにおけるオーガニックに対する信用や需要の高さが伺えます。

 

日本のビオホテル八寿恵荘内のお食事処(ドイツIOB合宿風景)写真:長野県安曇野にあるビオホテル八寿恵荘内のお食事処。2019年著者が起業家向け合宿を主催した際の写真

 

日本では、ビオホテル協会の公認を受けたBIO HOTELS JAPANが2013年に発足し、以来独自の基準を設けてビオホテルの国内普及に努めています。現在、長野県、福島県、北海道に3軒のビオホテルがあります(2020年7月現在)。

ビオホテルの認証基準

ビオホテルタンナーホフの朝食(写真提供:四角大輔)ビオホテルTannerhofの朝食(写真提供:四角大輔

 

ビオホテル協会が設けている基準はとにかく厳しくて細かい! なんと、例外処置にまで渡って細かい決まりがあります。下記ではその例をご紹介します。

たとえば、
食品・飲み物は原則オーガニック認証を取ったもののみ使用可能

  • ホテルで提供される食事や飲み物は、オーガニック認証を取ったものか、それと同等に厳しい条件下で作られたもの、ないし野生採取のものだけ
  • できるだけ地元産であることが望ましい
  • 魚や肉は、漁業者や畜産農家から直接購入するか持続可能であるという漁業認証や産地証明などがあるものに限る
  • ホテルの畑は有機畑として認証を受けていること
  • 電子レンジの使用禁止
  • ソフトドリンクとビールはオーガニック認証を受けたもののみ
    など。


例外

  • 食品、ソフトドリンク、ビールは、ホテル1軒につき3品まで協会基準外の製品を使用してもいい
  • 協会基準外製品を使用する場合は、宿泊者がそれとわかるように明確に表記する
  • 協会基準外製品を使用する場合は、1品につきそれぞれ基準外料金が徴収される
    など。

 

ビオホテルタンナーホフビオホテルTannerhof, 著者撮影

 

コスメはオーガニック認証を取ったもののみ使用可能

  • ホテルの部屋やショップなどで使用・販売するコスメは、協会が指定するナチュラル・オーガニックコスメ認証をとったコスメだけ
  • 協会指定以外のナチュラル・オーガニックコスメ認証コスメを使用する場合は、都度協会から許可を得る


環境マネジメントの徹底

  • 継続的な温室効果ガス排出量の改善(ゲスト一人当たりのCO2排出量上限値が明確に決まっている)
  • 環境認証であるエコホテル認証(ehc: eco hotel certified)の取得
  • 再生エネルギーの使用
  • 再生紙や森林認証制度FSC紙の使用
    など。

さらに、基準には含まれないものの各ホテルが自主的に取り組んでいるのが、寝具やタオルなども認証を受けたオーガニックコットン素材のものを揃えていること。

 

ビオホテルタンナーホフの夜ビオホテルTannerhofのサウナエリア, 著者撮影

 

Biohotel Mattlihüs(ビオホテル・マトリヒュース)経営者Alexander Geissler氏に現地でインタビューを行ったところ、ビオホテル基準の中で最もチャレンジングなのは温室効果ガス排出量の管理だと言います。

地球温暖化問題は、地球や人類にとって最大にして喫緊の課題であり、政治家や消費者だけに任せていては解決不能。産業側も大革命を起こさなければならないとビオホテル協会では考えているため、厳格な値になっているのだそう。

基準による効果はすでに出ており、欧州のビオホテルではそのおよそ半数が温室効果ガス排出量が正味ゼロ、つまり気候中立であるか、さらにその上をいく正味マイナスのホテルも出てきていると言います。要は、温室効果ガスの吸収量が排出量を上回る状態で経営されているということ。

このように、一般的なホテル業界では考えられないようなことを欧州ビオホテルは達成しています。

 

ビオホテルタンナーホフ(写真提供:四角大輔)ビオホテルTannerhofの食事エリア(写真提供:四角大輔

 

年々厳しくなるビオホテル基準

Wellnessbereich-Bergblick-Mattlihues写真提供:Biohotel Mattlihüs(ビオホテル・マトリヒュース)

 

ビオホテルには毎年検査が入り、基準が遵守されていないとみなされた場合は、罰金や強制退会が課せられます。
ビオホテルの基準が協会設立当初からここまで厳しく管理されていたわけではありません。あるのはむしろ、長い年月をかけて協会が抱いている想いやアイデアを少しずつ形にしていった歴史です。

おもなビオホテル基準の歴史

  • 2001年:食品基準の導入
  • 2006年:飲料基準の導入
  • 2010年:コスメ基準の導入
  • 2011年:エコホテル認証(EHC: eco hotel certified)の導入
  • 2018年:ワイン基準が厳格化

ビオホテルの基準は今後さらに、厳しくなっていくと考えられています。

本場ドイツよりビオホテルのご紹介

Biohotel Mattlihüs(ビオホテル・マトリヒュース)

南ドイツ、バイエルン州アルゴイ地方にある標高1200メートルにあるこちらのホテルは、ハイジが出てきそうなアルプスの眺めが何と言っても豪華! 部屋のどこにいても目に入ってくるので、この壮大な眺めが部屋の一部と化しています。

 

ビオホテル・マトリヒュース部屋からの景色泊まったお部屋のベランダから, 著者撮影

 

食事・飲み物はもちろんオーガニック100%。アメニティーやスパで使用されるコスメ、リネン類もオーガニック。

こちらのホテルは、「Holz100」という人と自然の健康を守る新設の建物で有名です。
家の中の空気を吸っているだけで化学物質化敏症やアレルギーなどの様々な健康障害を発症すると言われる猛毒環境ホルモンや有害物質が多くの住宅に使用されていると言われる中、Holz100では有害物質ゼロの空間づくりが徹底されています。

具体的には、壁紙や接着剤などの化学物質を一切使用せず、無垢、天然石、壁土といった自然素材のみを使って特殊な建築工法を採用して建てられています。

また、電磁波にもさらされない工夫が随所でなされ、スパや受付付近などは風水にもこだわり抜いた建物になっています。

私が宿泊したHolz100内にある「Galerie Suite」というお部屋は、筒抜けの二階にバスタブがボンと置いてあるというミニマリスティックで斬新なデザイン。バスタブには、施設内オーガニック農園で採れたドライハーブが入った手作りバスソルトが用意されています。天井窓から見える青い空とお風呂側の窓から見えるアルプスの景色が最高に豪華でした。

 

ビオホテル(レムケなつこ撮影)写真提供:Biohotel Mattlihüs(ビオホテル・マトリヒュース)

 

Holz100の棟にある客室はすべて無垢材むき出しで、温もりや香りがなんとも言えません。ここにいるだけでぎゅっと優しく包まれているそんな気分ににさせてくれます。呼吸をするほど心身が癒される、宿るエネルギーがとにかくポジティブなビオホテル・マトリヒュース。

 

Biohotel Mattlihüs(ビオホテル・マトリヒュース)
Familie Geißler
Iselerstraße 28
87541 Bad Hindelang/Oberjoch
www.mattlihues.de

Biohotel Tannerhof(ビオホテル・タンナーホフ)

南ドイツバイエルン州バイリッシュツェル市にあるビオホテル・タンナーホフ。大自然の一部に溶け込みながら佇む宿泊施設です。

ビオホテルタンナーホフ景色(撮影:レムケなつこ)ビオホテルTannehof施設内の風景、著者撮影

 

もともとは、サナトリウム(療養所)だったタンナーホフ。創設者はベルリンの医師で、不調を訴える患者らのライフスタイルを変えようと、1600年代に建てられた農場を改築し、治療施設として1920年代に開業したのが始まりでした。薬を摂取せずとも、ここに長期滞在するだけで治癒する患者さんが多数出るようになったといいます。

ドイツには、かつて、保養施設に滞在して自然療法と生活改善に専念する「クア」という医療制度がありました。「転地療養」とも言われる療養スタイルで、治療費の他に滞在費までもが健康保険の適応となりました。そのおかげでこちらの宿泊所も繁盛していたそうです。

 

ビオホテルタンナーホフビオホテルTannehofでは無料で参加できる屋内屋外アクティビティーが日替わりで複数用意されている(写真提供:四角大輔

 

ところが、この医療制度が廃止され、その頃にタンナーホフもクア療養所からビオホテルへと転換します。このような背景からここタンナーホフは、いまだに療養所としての特質を保つ異彩を放ったビオホテルとして国内外のお客さんから支持を得ています。

タンナーホフを経営するのは代々ドクター。現在は4代目で今でもホテルの中に診療所があり、ホメオパシーなどの自然療法に精通した医師の他にも理学療法士などがおり、宿泊ゲストの健康管理をしています。

通常の欧州のビオホテルと同じように、ここでは飲食、リネン類、コスメはすべてオーガニック、と言いたいところですが、実際にはこのホテルにはオーガニックではないものが2つあります。それは、地元ビール。

オーガニックの欧州定義の中には、地産地消のコンセプトが内包されています。そのため、ビオホテル基準でもオーガニックなものが入手できない場合は、ローカルなものを使用するという決まりがあります。ゆえにタンナーホフは、欧州の厳しいビオホテル基準をきちんとクリアしているということになります。

 

ビオホテルタンナーホフ客室タンナーホフ客室, 著者撮影

 

2019年夏に私が宿泊したのは、本館からちょっと離れた「タワー」と呼ばれる棟。周りで放牧される牛たちがつけるカウベルの響きで毎朝目を覚まし、バルコニーから拝む壮大な自然の景色で心身を調整する。就寝前に満天の星に、その日味わえた喜びを感謝する。そんな贅沢な時間を過ごしました。

 

Biohotel Tannerhof(ビオホテル・タナホフ)
Tannerhofstraße 32
83735 Bayrischzell
natur-hotel-tannerhof.de

ビオホテルが流行れば流行るほど社会は豊かになる

Biohotel Mattlihüs(ビオホテル・マトリヒュース)提供写真提供:Biohotel Mattlihüs(ビオホテル・マトリヒュース)

 

ヨーロッパ6か国に存在する80軒近いビオホテルのビジネスは、小学校の校庭8000-9000個分はいるようなイメージの有機ほ場に支えられていると言われています(約8000-9000ヘクタール)。

ビオホテルが流行れば流行るほど、気候変動緩和が促進する。地域の有機農家さんの暮らしが安定する。その地域の水質・土質が改善する。もっと広い範囲の環境負荷軽減や資源保護に繋がる。関わるすべての命の健康を促進できる。さらに、オーガニックが心地よいものとして広まって行く。そんなプラスの循環を生み出していけるのがビオホテル。

ビオというドイツ語はもともとはギリシャ語のBiosで、「命」が語源となっています。ビオホテルはまさに、命をつなぐホテル。宿泊客だけではなく、周囲や関わるすべての命を豊かにしてくれる。そんなビオホテルを是非とも次回の旅行の目的地にしてみてください。

 


日本では手に入らないオーガニック情報

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