ドイツ人34%が「卵は有機のみ購入」と回答

出典RTL.de RTL.DE 

 

ドイツで人気が高いオーガニック食材として知られるものに、有機卵がよく挙げられます。2019年市場に出回った卵のうち、5個に1個は有機とも言われるほどの人気を博しています。

2019年にドイツで行われた世論調査では、「有機卵をときどき買う」、「有機卵をよく買う」、「卵は有機のみ購入する」と答えた人を合わせると全体の約89%もいたという報告があります。そのうち、なんと34%の人が「卵は有機のみ購入する」と回答しているほどです。

オーガニック食品を買うと答えた人のその理由の第1位は、「アニマルウェルフェア(動物福祉)のため」という市場調査結果が出ており、ドイツ人にとってアニマルウェルフェアという概念は、食を取り巻く事象に関して最大の関心ごととなっています(有機農業と持続可能な農業に関するドイツ連邦政府プログラム(Bundesprogramm Ökologischer Landbau andere Formen nachhaltiger Landwirtschaft(BÖLN))が行なった世論調査2019より)。

養鶏場、そこは生まれたての命が殺される現場

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2017年、世界では約7兆羽のオスのひよこが孵化直後に殺処分を受けたという報告があります(Poultry Science, Science Directより)。

日本や私が暮らすドイツでも、約5000万羽のオス雛が昨年それぞれの国で殺されたというデータがあります(2017年統計:ドイツ統計の出典(Neue Technologie soll das Töten von Küken beenden, WeLT), 日本の統計の出典 「鶏卵関係資料の統計表」日本卵業協会 よりオス・メス雛の割合を半々で考えて計算)。

採卵養鶏でオスの雛が殺される理由は、育てても卵を産まないから。さらに、採卵鶏は食肉用としては味がよくない品種が多く成長速度が遅いため、農家にとっては食費などの維持費が高くつくだけで、最終的には農業経営を圧迫すると考えられています。

 

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オス雛の殺処分方法は様々で、先進国では毒ガスを使用されたり、シュレッダーのような機械で粉砕され、その後、他の動物の餌になるケースが多いと言われています。新興国や途上国では、焼却処分、溺死、窒息死、生きたまま他の生き物の餌にされると言った残虐な方法が取られるケースもあり、世界から厳しい批判を受けてきました(PETA alleges cruelty towards male chicks at hatcheries, Indian Expressより)。

世界初の法律や技術がドイツで誕生

この世論が政治を動かし、2020年9月ドイツ連邦食糧・農業省大臣ユリア・クロクナー氏により、オス雛を生きたまま殺処分する行為を禁じるという、世界で初めてとなる法律の草案が提出されました。草案通りにいけば、ドイツでは2022年1月よりオス雛の殺処分が禁止されることになります。

ドイツ政府はこれまで、オス処分を減らすための取り組みや技術開発に累計800万ユーロ(約10億円)を投じてきました。この促進策により、2016年にはドイツ・ドレスデン工科大学がリトアニア・ヴィリニュス大学と共同で、鶏の有精卵にレーザーを当ててオス・メスを区別する技術を開発。

産業界でもこのような技術開発の流れを受けて、ドイツ大手スーパーREWE(レーベ)では、2020年の年末までに当技術を使用し、平飼いの卵は100%オス処分ゼロの「アニマルウェルフェアに配慮した」卵のみ販売することを表明しています。

1927年に創設した当スーパーの2018年の売上高は610億ユーロ(約7.3兆円)です。欧州22か国に展開し36万人の従業員を雇う大企業が今後社会にもたらすインパクトは計り知れないと言われています。

エシカルな生産ができなければオーガニックではない

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しかし、この新技術にも落とし穴があります。それは、有精卵にレーザーを当ててオスだと判断された卵は孵化するまえに結局殺処分されてしまうということ。

この技術の導入は、ドイツのオーガニック産業界では大きな批判の的となり、当技術を受け入れないという表明が各団体で出されるほどでした。

たとえば、ドイツのオーガニック認証団体DEMETER(デメター)、BIOLAND(ビオラント)、NATURLAND(ナトゥアラント)では、「オスの殺処分の時期が早まっただけで問題の解決になっていない」と技術を全面否定し、その後もそれぞれの有機基準内でレーザーの使用を認めていません。

有機養鶏が目指すのは、鶏という生命の尊厳を守りながら養鶏業を営むこと。そのためには、オス雛もメス雛と同様に無駄に殺されてはならないと考えています。

2015年、Ökologische Tierzucht (ÖTZ) gGmbH(エコロギッシェ・ティアツフト)という育種会社がドイツで設立されています。これは、オス雛を殺処分せずにすむ新しい有機養鶏の品種改良を進めるために、ドイツのオーガニック認証団体が共同で設立した会社です。

採卵用としても食肉用としても生産性を高く保てる改良品種が作り出され、養鶏家にとって経営が現実的なものになるようなら、オス雛は無駄に殺されずにそのまま食用の鶏として育てられることになります。

ただし、この品種改良が実現するまで少なくとも後10〜15年はかかるだろうと言われています。

有機養鶏家が直面するコスト問題

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日本の農林水産省によると、有機畜産とはおもに、有機農産物を飼料として与え、遺伝子組み換え技術や抗生物質などの薬剤に頼らず、家畜の行動・生理要求に沿って野外への放牧などを行い、ストレスを与えずに飼養する畜産農業です。これは、家畜に不必要な苦痛を与えずよりよい生活を保障しようとするヨーロッパで生まれたアニマルウェルフェアの考え方に基づいています。

問題は、有機養鶏は比較的コストが大きく、養鶏家の財政負担が大きくなりがちなこと。たとえば、ケージ飼い(カゴを使った飼養)の大規模養鶏は1羽あたり年間約330個の卵を産むのに対して、有機養鶏は約280個が限界と言われており大幅に出荷量が落ちます。

また、有機基準では1羽あたりの飼養面積が規定されており、ケージ飼育などを行う従来の慣行養鶏の場合と比較して、広大な土地を確保する必要があります。

しかも、世界に存在する採卵鶏はほとんど同じ品種と言われており、いずれもハイパフォーマンス種。この種の養鶏は、高タンパクの餌を大量に摂取して短期間で育つように改良された品種です。

このような種を有機養鶏で飼養する場合、有機餌は比較的低タンパクなため長期に渡って大量の餌が必要になることから、農家の財政を圧迫するほどのコスト高になってしまいます。

私たち消費者にできること

 

前述したドイツオーガニック認証団体が推し進める運動の活動経費は、ほとんどが一般消費者や産業界によって支えられていると言います。尊い命を無駄にしたくない、家畜・家禽にも動物らしく生きる権利がある、そう強く思う人たちの寄付や消費によって品種改良などのプロジェクトが日々前進することができています。

真のアニマルウェルフェアを具現化した有機卵が改良されるまで、気の遠くなるような養鶏家の並々ならぬ苦労や努力が必要になります。また、有機養鶏が世代を超えて生き残るためには、私たち消費者が消費し続けることが何よりも大事。

ドイツと比べると日本では有機養鶏は生産者も出荷量もまだごくわずかです。公的資金や支援が限られていること、研究や技術開発が遅れていること、有機餌の入手のしにくさ、土地確保の難しさ、販路が限られていること、消費者の意識がまだ低いことなど、日本の有機養鶏家は圧倒的に不利な立場にあります。

有機卵を日本で確実に広めるためには、今、あなたの理解と支援が求められています。

 

 


日本では手に入らないオーガニック情報

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