2021年版の最新統計データが発表されました!詳しくはこちらをどうぞ↓

 

2020年2月12日、ドイツ・ニュルンベルクで開催された世界最大規模オーガニック専門展示会Biofach(ビオファ)開催に合わせて、最新版オーガニックデータが公表されました。

数値で世界のオーガニックトレンドや傾向について押さえておくことは、オーガニックセクターで働く方やオーガニック関連の知識を深めたい方にとっては必要不可欠ではないでしょうか。

当記事では、日本語ではなかなか入手できない世界のオーガニック最新データをもとに、世界のオーガニックトレンドの重要ポイントを追っていきたいと思います。

Contents

2020年も新たな記録を更新!世界のオーガニック最新データ

有機農業の取組面積

IOB代表レムケなつこオーガニック農場視察著者撮影

 

有機農業に関する世界の統計データは今年も新たな記録を更新しました。

2020年に発表された世界全体の有機農業取組面積は7,150万haで、これは昨年から202万haも増加したことになります(前年比2.9%増)。202万haというのは、身近なものでたとえると、東京ドーム約42万5千個分にもなり、世界で有機農業が広がる勢いの凄さが想像できると思います。

国別で見ると、有機農業取組面積が最大なのは、オーストラリアで3,570万ha。オーストラリア一国だけで、有機農業面積の世界全体の約半分を占めているのがわかります。それに続くのが第2位のアルゼンチン360万haと第3位の中国310万haです。オーストラリアの場合、有機農地の9割以上が牧草地となっています。

一方、大陸別で見ると、国別トップだったオーストラリアを含むオセアニアが1位で約3,600万ha、2位はヨーロッパで1,560万ha、3位はラテンアメリカで約800万haと続きます。すべての大陸において有機農地は増加し、昨年の記録を更新しています。

総農地に占める有機農地の占有率は、世界全体で1.5%になりました。しかし、国別で見ると多くの国ではこの値をすでに超えており、占有率2桁を超える国が今年のデータでは16ヶ国にもなります。

1位はリヒテンシュタイン(38.5%)、2位はサモア(34.5%)、3位にオーストリア(24.7%)と続き、日本における有機農地占有率0.2%(世界109位)と世界上位国では大きな開きがあることがわかります。

最後に、有機農業面積の前年比成長率を見ると、大陸別で最も成長率が高かったのはアジア(8.9%)。つぎに、ヨーロッパ(8.7%)、北米(3.5%)、オセアニア(0.3%)、アフリカおよびラテンアメリカ(0.2%)と続き、アジア大陸で有機農業の普及が進んでいるのがわかります。国別では、フランス(前年比16.7%増)とウルグアイ(前年比14.1%増)が最も顕著に成長した年になりました。

有機生産者数

2020年版有機農業生産者数The World of Organic Agriculture. Statistics and Emerging Trends 2020

 

2018年時点で有機生産者数は、世界全体で少なく見積もっても280万人いると報告されています。前年と比較すると全体の5%に当たる15万人ほどの生産者数が減少しましたが、最新データの9年前に当たる2009年からは55%も増加しています。大陸別で見ると、約半数の47%がアジアに集中し、つぎに多いのが28%のアフリカ、欧州15%、ラテンアメリカ8%と続きます。

国別では、例年同様インドが世界最大で有機生産者数は約115万人。よって、全世界の有機生産者の2.4人に1人はインド人という結果になっています。それに続くのが、2位のウガンダと3位のエチオピアで、それぞれ約21万人、約20万人という結果になりました。

土地利用状況と有機農産物

放牧イメージpixabay

 

世界で有機農業が取り組まれている土地の3分の2以上に当たる4,820万haは、実は牧草地として利用されています(前年比2.9%増)。穀物などの一年生作物が育てられている農地は、全体の18.6%足らずで、今年発表されたデータによると、世界全体で1,330万haという結果でした(前年比4.9%増)。なお、オーガニックのおもな一年生作物は、穀物(米を含む)、飼料、油を取るための油料種子、豆類、綿花になります。

対して果樹に代表される永年性作物は、今年は全体の8%という結果にとどまり、前年比でいうと2.9%減に当たります。おもな要因は、メキシコでオーガニックコーヒーとトロピカルフルーツの生産報告が減ったためと考えられています。有機のおもな永年性作物は、コーヒーとトロピカルフルーツの他に、オリーブ、ナッツ、ぶどう、ココナッツ、カカオなどが挙げられます。

今年、農産物で驚異的な成長を遂げたのは、オーガニックコットンでした。その生産量は全体で18万トンを超え、成長率は対前年56%増にもなります。オーガニックコットンのおもな生産地はインド、中国、キルギスタンといったアジア地域に集中しています。

 

オーガニックコットンについては、「フェアファッションが世界を救う 〜 あなたは「誰かの苦しみ」の上に作られた服をまとっている!?」も参考ください。

オーガニック市場と消費

オーガニック市場と消費グラフThe World of Organic Agriculture. Statistics and Emerging Trends 2020

 

小売売上高で見た世界の有機市場規模は、今年発表された2018年の統計データで初めて1,000億米ドルを上回りました(967億ユーロ、約11兆6000億円)。世界最大の市場を誇るのは米国で、その額406億ユーロ(約4兆8700億円)に上ります。2位はドイツで市場規模は109億ユーロ(約1兆3000億円)、3位はフランスで91億ユーロ(約1兆900億円)となっています(すべて1€=120円で計算)。

EU連合としてヨーロッパ全体で市場規模を見ると、米国についでEU連合は373億ユーロとなり、このトップ2地域を合わせると世界全体の80%を超える巨大市場になります。3位に躍り出るのが中国で(81億ユーロ)、この3地域で世界市場の約9割を占めています。

年間平均一人当たりのオーガニック商品消費額が最も高かったのは、スイスとデンマークで両国ともに312ユーロ(約37,440円、1€=120円で計算)となりました。オーガニック市場成長の伸びが高かったのは、フランスで15.4%、またオーガニック商品の市場占有率が高かったのは11.5%のデンマークでした。

2019年に農林水産省が発表した日本における一人当たり消費額は約960円。世界ではどれだけオーガニック商品が浸透し、日本にはまだまだ伸びしろがあるかということがご理解いただけると思います。

有機農産物の輸出入の状況

世界地図イメージpixabay

 

オーガニック農産物の貿易統計データは入手できる情報が限られており、得られる情報のほとんどが欧州のデータと地域性も偏っています。今年の貿易統計データには欧州連合が今までに公開してこなかった詳細な貿易統計データが含まれています。その概要は下記の通りです。

  • 欧州における年間有機農産物輸入量:約330万トン
  • おもな輸入品目(輸入量の多い順):トロピカルフルーツ(生鮮または乾燥)、ナッツ、スパイス、油かす、穀物など
  • おもな輸入先(輸入量の多い順):中国、エクアドル、ドミニカ共和国、ウクライナ、トルコなど

有機基準と認証システム

demeter認証logodemeter

 

2019年現在、世界で公的な有機基準を有する国は、策定中の国も含めると103カ国になります。有機JASもそのひとつですが、こういった公的基準の他にも、民間団体が独自基準を設けて認証する民間認証があります。

たとえば、世界最高峰有機農業と称されるバイオダイナミック有機農法を管理するドイツ認証団体Demeter(デメター)も民間認証のひとつです。(参考記事:「なぜ、オーガニック先進国ドイツでオーガニックがここまで広まったのか~」)Demeterでは、2019年6月時点で、世界63カ国から約5,900人の農家が、合わせて20万haを超える農地でDemeter認証を受けた農産物を栽培していると報告しています。

上述のような公的基準や民間基準の他にも、地域の生産者や消費者などが集い、グループ内で承認し認証し合う「グループ認証」と言われる認証システムもあります。世界で有名なのは、内部管理制度(Intenal Control System:ICS)や参加型認証制度(Participatory Guarantee System:PGS)です。

世界全体で260万人の有機農家が5,800にもおよぶICSグループを運営しています。これは土地面積にすると450万haにもなります。PGSグループは、世界76カ国に223グループ存在しており、56万人を超える生産者がPGS認証システムの中で有機農業を営んでいます。

世界の有機農家の80%は認証コストが払えない低・中所得層の零細農家です。グループ認証では、独自の基準をグループで策定し認証し合うことから、コスト削減しつつも生産者が認証を得ることが可能になっています。

このグループ認証自体を公的基準と同等とみなし、有機農産物として表示・販売する許可を出す国も近年増えています。2019年現在、世界で10カ国がPGS認証を公的基準と同等であると認めています。

アジア地域有機農業の統計データ

アジア地域有機農業データThe World of Organic Agriculture. Statistics and Emerging Trends 2020

 

冒頭にあるように、アジアの有機農業取組面積は昨年のデータより54万ha増加し、成長率は前年比8.9%増と今回世界最大の値となりました。有機農業面積は、アジア全体で650万haで、総農地に対する有機農業面積の占有率は0.4%になります。国別の占有率では、

  1. 東ティモール16.8%
  2. スリランカ2.8%
  3. ベトナム2.2%

と続きます。

面積で見ると、1位の中国313万haと2位のインド193万haで、アジアにおける有機農業取組面積全体の約78%がこの二国に集中しています。

世界の傾向と大きく異なるのは、有機農地の土地利用状況です。アジア地域では、全有機農地の53%で一年生作物が育てられています。その多くが、小麦やコメなどの穀物で中国とキルギスタンに栽培地が集中しています。永年性作物は有機農地全体の10%で、ココナッツ、茶、コーヒー、ナッツ、フルーツの順に多く育てられています。

牧草地は全体の0.4%と少なく、その他は不明という結果になっていることから、それぞれの値が実際よりも少なく報告されてるのではないかと推測されています。

データ出所と統計データを取りまとめている団体

毎年2月に開催される世界最大規模オーガニック専門展示会Biofach開催に合わせて、「The World of Organic Agriculture(有機農業の世界)」が出版され、この中で世界のオーガニック最新データが公表されています。初めて刊行されたのは2000年なので、20年以上も続いているということになります。

グローバルレベルで信ぴょう性のある情報やデータを集めて「The World of Organic Agriculture(有機農業の世界)」を策定するのは、オーガニックセクターで最も影響力のある研究機関FiBL(有機農業研究所)とオーガニックセクターの国連と言われるIFOAM(国際有機農業運動連盟)。加えてマーケティング調査は英国Ecovia Intelligence社が担当しています。

「The World of Organic Agriculture(有機農業の世界)」で使用されるデータの多くは、出版物の2年前のデータになります。つまり、2020年に刊行された今回の資料は、2018年末までのデータということになります。おもに、各国政府(今年は186カ国が提供)、FiBL、民間認証団体が集めたデータがもとになってまとめられています。

2020年世界のオーガニックデータまるわかり表

最後に、2020年版最新オーガニック統計データのまるわかり表を作成し、下記に掲載したので、知識の定着に活用ください。

 

2020年版世界のオーガニックトレンド丸わかりThe World of Organic Agriculture. Statistics and Emerging Trends 2020をもとに著者作成

 

ここまで、いかがでしたか?

今年も多くの記録を更新した世界のオーガニックセクター。オーガニックが当たり前な社会や、オーガニックがメインストリーム化しつつある時代がもうそこに来ている、そんな印象を与えてくれたデータだったと感じています。

統計データから、日本がどれだけ世界から大きな遅れをとっているのかも部分的に見えてきたのではないでしょうか。日本国内における有機農業推進の一助としても活用できる本統計データ参考元はネットで公開されているので、ぜひご覧ください。

来年も同時期に世界のオーガニック最新データをまとめた記事をリリースします。どうぞお楽しみに。

参考資料:
Willer, Helga, Bernhard Schlatter, Jan Trávníček, Laura Kemper and Julia Lernoud (Eds.) (2020): The World of Organic Agriculture. Statistics and Emerging Trends 2020. Research Institute of Organic Agriculture (FiBL), Frick, and IFOAM – Organics International, Bonn. www.organic-world.net/yearbook/yearbook-2020.html (最終アクセス:2020年2月14日)

農林水産省 (2019). 有機農業をめぐる我が国の現状について. https://www.maff.go.jp/primaff/koho/seminar/2019/attach/pdf/190726_01.pdf(最終アクセス:2020年2月14日)

 

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