2019年9月12日ドイツIOBオーガニックスクール(以下、IOB)ランチ交流会に参加してきました。オーガニック起業家向けに企画されたIOBランチ交流会。今回の交流会では起業家として活躍中の方はもちろん、学生、IOBに興味をもっている方、子連れでの参加など、様々な方が集まりました。当日どのように過ごし、どんなことを感じたかレポートしてみようと思います。

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ドイツIOBオーガニックスクールランチ交流会当日、朝

当日は東京や関東近郊からはもちろん、はるばる愛知県や長野県からの参加者もいました。筆者自身も愛知県から子どもと参加しました。普段オンラインで繋がっている受講生や、IOB代表レムケなつこさんとリアルにお会いできるという貴重な機会。実際にお会いしたら「どんな方たちだろう?」と不安と期待で胸が高鳴ったのを覚えています。

ランチ会会場は、90年佇む国登録有形文化財

撮影:IOB

 

会場は神奈川県鵠沼にある「松の社 くげぬま」。初めて降り立つ藤沢駅から江の島電鉄に乗り換えて鵠沼駅へと向かいます。初の江の島電鉄(江ノ電)はレトロな趣で、旅にきた気分が一気に盛り上がります。車内の床は木製で、開かれた車窓からは気持ちよい風が吹き込みます。

鵠沼駅に到着すると参加者の方たちもちょうど駅に到着したところでした。すでに顔見知り同士の方もいれば、私のように参加者全員と初対面の方もいます。IOBランチ交流会に参加する者同士とわかると、自然と仲間意識が芽生え、一緒に会場まで向かいました。

明治時代、日本初の別荘分譲地として開発された鵠沼は、住宅街となった現在もなお、背の高いクロマツが海に続く道にアーチを作り、静かで風情ある景観を醸し出しています。

会場となっている「松の社鵠沼くげぬま」は、藤沢市鵠沼に90年佇む国登録有形文化財に指定された古民家です。その建物を守るように囲う野趣溢れる庭園が広がっています。

古民家の中はおばあちゃんの家にきたような懐かしい香りがし、思わず深呼吸したくなる場所です。

 

撮影:IOB

 

オーナーである尾日向梨沙さんのおじいさまが70年前に別荘として購入し、その後自宅として祖父母が暮らしていました。東京で生まれ育たれた尾日向さんでしたが、10年ほど前からおばあさまとふたり暮らしを始めます(おばあさまは2018年11月に他界)。

2018年3月に松の社 くげぬまが国登録有形文化財となり、オーナーの尾日向さんは祖父母の意思を継ぎ、保存活動を進めていらっしゃいます。尾日向さんは老朽化する家屋を維持するためたくさんの人に利活用してもえるよう様々なイベントを企画開催されています。庭園でのヨガレッスンや身体に優しいランチ会、陶芸や金継ぎワークショップ、オーガニック野菜販売会、茶会、音楽会などイベントは多岐に渡ります。「この建物を守ることは、庭に生きる巨木や何百種類の動植物の命を守ること。地球温暖化を防ぐことにもつながります。だからここは絶対に守らなければならないと感じています。」尾日向さんはそう語ってくださいました。

自己紹介タイム

撮影:IOB

 

11時ごろ参加者が集まり、いよいよ交流会がスタートしました。まずは、参加者みなさんで自己紹介をします。

集まった参加者は私のような子連れ主婦もいれば、オーガニック起業家として活躍中の方、学生、以下のように様々な分野で事業を展開されている方などがいらっしゃいました。

  • シュタイナーの考えを取り入れたお菓子教室を主催
  • 有機豆を使ったグルテンフリーのパン教室とオンラインショップを運営
  • お母様のご病気を治すためにゲルソン療法を実践されていらっしゃるイタリアンシェフ
  • もみ殻を使った燃料の生産販売やオーガニックアロマオイルの輸入事業を経営
  • モデル業とオーガニック素材の薬膳の認知活動を兼業
  • イギリスの自然療法を学んでいる方
  • ガーナで孤児院を設立するプロジェクトにかかわる方

などです。さらに、IOBスタッフとしてプラスチックゼロ活動を推進するみつろうエコラップKoKeBee代表の楳村郁子さんもはるばるオーストラリアから参加されていました。

様々な経歴を持つみなさんに共通しているのは、オーガニックについてもっと深く学びたいという意欲を持っているということ、そして家族や社会、地球、次世代のために何ができるかを真剣に考え、常日頃から行動しているということでした。

ランチタイム

ランチタイムの楽しみ1.「食品ロスを減らすランチZero Waste Kitchenで舌鼓」

撮影:IOB

 

今回は食品ロスを減らすランチZero Waste Kitchen(ゼロウェイストキッチン)を掲げるランティミテノマドさんのおいしいお料理をブッフェ形式でいただきながら交流会を進めていきました。庭園にセッティングされたテーブルにはおいしそうなごちそうがずらりと並びます。「わー! おいしそう!」 みなさんから思わず笑顔がこぼれ、歓声が上がります。しばらくお料理撮影タイムが始まります。青空の下深呼吸したくなるような深緑に囲まれて、参加者のみなさんの気持ちもリラックスし参加者同士の会話も始まります。

ゼロウェイストキッチン「ランティミテノマド」
http://bistrolintimite.com/

ランティミテノマドさんは「美味しいごはんは世界を変える」をモットーに、もともとあった店舗を閉じ、『本当に必要な人に必要なものを届けたい』という思いで、出張シェフとして活動を始めました。

シェフは自己紹介の中で、「フードロス、添加物、味覚障害」など世界の食問題に取り組むためゴミを出さないZero Waste Ktichen活動をスタートされたことについてもお話しくださいました。

 

撮影:IOB

 

現在、世界中の食品の3分の1が廃棄されているそうです。有機や自然栽培農家さんが一生懸命作ったお野菜たちは形が悪いと売り物にならないと廃棄されています。形は悪いけれどおいしい野菜を積極的に使ってシェフはお料理をされているそうです。ごみを出さないため、会場のお皿やお箸も使い捨てでないものが用意されていました。

モロッコで3年間修行されてきたシェフの生み出す料理はどれも斬新でいて温かくやさしい味わいです。

 

撮影:IOB

 

塩はほとんど使わず、ゆっくり時間をかけて素材そのもののおいしさを引き出していくとのこと。かぼちゃのカレーは全くお塩を使われていないにもかかわらず、深い味わいに感動しました。

 

撮影:IOB

 

ランチをいただきながら「今、この瞬間」も廃棄され続ける食品について考えるきっかけになりました。ランチ交流会の中で、参加者がおのずから食糧や環境問題について考えることができるよう企画されるのもIOBならではです。

ランチタイムの楽しみ2.「参加者の交流タイム」

撮影:IOB

 

おいしい料理をいただきながら、4グループに分かれて席をシャッフルしながら4時間もの間、参加者のみなさん全員と交流を深めていきました。

それぞれのグループで話が盛り上がります。様々な経歴や事業、想いを伝え、耳を傾け、共感したり刺激を受けたりしながら活発に意見や情報交換が行われました。

ランチタイムの楽しみ3.レムケなつこさんとのお話

撮影:IOB

 

そしてランチタイムでは、ずっとお会いしたかったオーガニック専門家レムケなつこさんとも個人的にじっくりお話させていただくことができました。

ここで、オーガニック専門家でIOB代表レムケなつこさんを知らないという方へ紹介させていただきます。

発展途上国でJICA青年海外協力隊として活動されていたなつこさんは、現地の子どもたちの過酷な労働状況を目の当たりにし、社会の歪んだ構造に絶望的になった経験から、オーガニックが世界を変える可能性を持つことに気づき、以来強い信念をもって行動し続けてきました。世界のオーガニック基準を策定しているNGO 国際有機農業運動連盟IFORMの日本人で唯一の研修メンバーでもあります。

今回は、日本の農業の在り方について語りました。

現在はたった300社ほどの食品流通企業が世界中の7割の利益を得ているということです。さかのぼると有機生産者である農家さんが得られる利益はほんのわずかです。有機・自然栽培に取り組む農家さんは一生懸命野菜を育て、売れば売るほど赤字になる構造だそうです。

直近でも日本で30年以上バイオダイナミック農法を用い、8ヘクタールもの畑を作り続けてこられた農家さんが、「もう疲れた」と農家をやめることを検討されていると話していました。現在日本では、有機・自然栽培をがんばってきた農家さんが自殺に追い込まれるほど悲惨な現状だそうです。

スーパーで野菜購入することをやめ、できる限り近郊農家さんから直接野菜を購入し地産地消を心がけることが、農家さんを応援するためにできることのひとつだとなつこさんは話していました。

 

撮影:IOB

 

また、参加型認証制度PGSについてもお話くださいました。これは国全体として認証を行うJASとは異なり、地域ごとに消費者、生産者が中心となって農場の調査や認証を行い、小規模ながら簡易に有機農業者を増やす仕組みとなっています。有機JAS を取らなくてもよいようにPGSを日本でも導入し、農家さんの負担を減らす施策を応援したいともお話しくださいました。
https://organicshizukuishi.jimdo.com/pgsとは/

「オーガニックは人、動物、社会すべてを幸せにするしくみ」とおっしゃるレムケなつこさん。「強く願えば必ず叶う」がモットーだと力強く情熱を私の心に燃やしてくださいました。レムケなつこさんは強い意志をもって行動すれば、必ず未来は変わるということを確信する時間となりました。

PGSについてはこちらも参考ください。

ドイツIOBオーガニックスクールランチ交流会後記

撮影:IOB

 

今回、様々な事業を展開されている方たちと熱く語り繋がれたことで、改めてオーガニックの可能性を実感しました。

そして、オーガニックとは何か学び、筆者自身何ができるのか深く考え、実践していきたいという思いを強くしました。

自分が生きていくうえで本当に大切だと思うことを仕事にし、ライフワークにしたい。そんな思いが大きくなってきたときに出会ったIOB。今回なつこさんや受講生の皆さんと実際にお会いしてその想いは確信に変わりました。

オーガニックが可能にすること
それは、個人の健康を守ること

それだけではありません。

動物や植物が幸せに生きること
不当な児童労働から子どもたちを守ること

温暖化防止に貢献すること
海洋汚染を食い止めること
地球環境を守ること

数えれば切りがないほど実現できることは幅広いです。

1970年代ドイツで起きた市民運動がオーガニックムーブメントを起こしたように、私たち一人一人が何を選択し、どう行動するかが日本社会を変えていくのだと思いました。

オーガニックの真の目的を達成するためにこれからがどうあるべきなのか、乗り越える課題はとてつもなく大きいです。その分そこに関わる喜びも大きいと思います。

ドイツIOBオーガニックスクールに入学してよかった。
ここで出会う人々と刺激しあい、励ましあいながら、オーガニックを通して私ができることを見つけ、本気で取り組みたい。そして、自分自身がイキイキした生き方をして世界を広げていくことが娘の成長のためにもとても重要だと強く感じました。

そんな風に心から思えた一日となりました。

日本では手に入らないオーガニック情報

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