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近年よく聞く「マインドフルネス」という言葉。マインドフルネスが日本で広まり始めたのは、2014年後半あたりから。スティーブ・ジョブズやGoogleがマインドフルネスをライフワークとして取り上げたことが大きなきっかけとなり世界中で広がっていきました。

また、テレビ番組や雑誌でも頻繁に話題になり、一気に一般社会に知られるようになりました。

実際グラフを見てもわかるように、マインドフルネスはここ数年の間、年間1000件以上も研究論文が増え続けています。

 

マインドフルネス研究論文数(図:清水智子作成)図:著者作成

マインドフルネスってそもそも何?

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「マインドフルネスって何ですか?」と聞かれたとき、みなさんは最初にどんなことが浮かびますか? 坐禅、瞑想、または呼吸法というようなイメージをお持ちでしょうか。

マインドフルネス(mindfulness)という言葉は、mind(心)に、ful(行きわたった)とness(状態)が合わせられてできた言葉です。

ここでは「心」を使って表現していますが、意味的にここでのmindは「意識」に近い感覚を指します。

「意識を行き渡らせることで、『今ここ』の体験(体感)に『気づき』、それを評価・判断をせず、ありのままに受け入れること」がマインドフルネスで、また「開放的で、囚われのない心の状態」の確立だと言われています。

マインドフルネスの歴史

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マインドフルネスの起源は仏教瞑想。2000年以上も前から存在します。
テーラワーダ(上座部)仏教の、悟りを開くために行われたサティパッターナ瞑想*1がルーツとされ、瞑想はその教えとともに、インドから中国・東南アジア諸国を経て日本へ、修行法の一つとして伝わりました。

日本では、長年、禅の心とともに根付いてきた瞑想ですが、近年、脳科学の研究技術が高度化し、臨床実験・数値化・分析研究がより進み、脳科学研究が加速したことで、目的が「悟り」から「治療」へと広がってきています。

1979年、マサチューセッツ大学医学校名誉教授のジョン・カバット・ジンにより「マインドフルネス・ストレス低減法」が開発されたのをきっかけに、「マインドフルネス」という言葉が一気に医学界・研究分野に広まりました。

マインドフルネスの2つの瞑想法

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さて、マインドフルネスの起源には、代表的な二つの根本的瞑想法があります。「サマタ瞑想」と「ヴィパッサナー瞑想」です。

この違いを簡単にお伝えすると『観察の仕方の違い』になります。

マインドフルネスで「観察」は、実際に目で見るだけではなく、五感と意識を使ってじっくりと「感じる」ことを指します。

一点集中、コントロール系マインドフルネス「サマタ瞑想」

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まずサマタ瞑想は、意識的に観察対象を、特定のことがら(呼吸、頭の中に浮かぶイメージ、概念、ろうそくの炎など1つに絞る)に集中させる「コントロール系マインドフルネス」のメソッドです。

たとえば、観察する対象を「呼吸」と決めたら、常に意識は呼吸に向けます。
時々、意識が周囲の音や動くもの、浮かんでくるイメージや思考に向かっても、そのまま「見えたな」「気づいたな」と認識するだけで捕まえず、すぐに意識を呼吸に戻すように集中するマインドフルネス法です。

開放的、非コントロール系マインドフルネス「ヴィパッサナー瞑想」

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一方のヴィパッサナー瞑想は、あらゆる事柄に対して「選り好みすることなく観察注意を払う」自由闊達な瞑想法。いわゆる「非コントロール系のマインドフルネス」メソッドです。

目を閉じて呼吸に注意を向けると、周囲のさまざまな出来事や考え・気持ち・記憶などに気づくことがあります。こうした内外に生じた事柄に次々と意識を移し、観察し続けるマインドフルネス法です。

「鳥が鳴いているな」「お腹がすいたな」など感じたら、それを「きれいな声だな」「お腹が凹むように感じるな」など、つぎに浮かぶものが出るまでじっくり観察するのです。

「今ここ」での気づきを前面に打ち出す近年のマインドフルネスは、このヴィパッサナー瞑想から派生したと言われています。ちなみにブッダは出家後、サマタ瞑想を極めた上で、自ら編み出したヴィパッサナー系瞑想で解脱・涅槃に至ったと言われています。

マインドフルネスの目的とその効果

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マインドフルネス=リラクゼーションと捉えられがちですが、これは似て非なるものです。

マインドフルネスの狙いはあくまでも『気づき』と『集中力』。
リラクゼーションはあくまでもそれに伴って生まれる「効果の一部」です。自分を忘れる・現実逃避・トランスミッション状態に入るというのもマインドフルネスとは異なります。

自分の呼吸の状態や周りの音、身体が感じる感覚などに意識を向け「続ける」ことが大事です。

慣れないうちは、感じることを隅から隅までスキャンニングし確認していくようなものなので、集中力が必要です。

「頭が真っ白」など、意識が飛んでしまっている状態は残念ながらマインドフルネスとは異なる状態なので、注意してください。

マインドフルネスのやり方

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マインドフルネスは気づいたときに実践することができます。
普段取り入れやすいマインドフルネスを紹介しますので参考にしてください。

  1. 背筋を伸ばし、頭頂部から糸でつられている感じで背中と首をまっすぐに伸ばします。
  2. 肩の力を抜いて、手は太腿の上に軽くおきましょう。
  3. 呼吸に意識を向けます。鼻を通り抜ける空気、喉の奥に感じる空気、肺を巡る空気の流れなどを感じてみてください。
  4. 目は閉じても半開きでも、開けていても構いません。ご自分がやりやすいリラックスできる状態を選んでください。
  5. 最初は呼吸5回からでも構いません。慣れてきたら10回、20回、1分、3分~と時間をのばしていきましょう。

 

マインドフルネスやり方(図:清水智子作成)著者作成

 

3.で呼吸に意識を向けるのが難しい方は、お腹か胸に手を置き、身体が膨らんだり縮んだりするのを感じてください。

慣れないと「息をしよう」としてしまいますが、「息をしようとしているな」と思うだけにして、2~3回深呼吸をしてみてください。

身体の力を抜き、お腹や胸に手を当てる方法への切り替えも試してみてください。大切なのは、呼吸を観察し続けることです。眠ってしまったり、意識が飛んでしまったら、時間や回数を減らしてやってみましょう。

上記以外でも、気がついたときにマインドフルネスを行なうことができます。

  • 食事でのマインドフルネス:食材の香り、口に入れるときの感触、噛みごたえ、舌の動き、唾液の出方、咀嚼音などをじっくり感じながら食べる。
  • 歩行のマインドフルネス:足の裏に感じる体重の移動の感覚、大地の硬さ、靴の中を動く足の感覚、股関節や腕の動きなど。

呼吸ができているか(止まっていないか)は常に意識してください。

現代のマインドフルネスについて

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現代のマインドフルネスも、大きく二つに分類されます。

一つは、前述の仏教的な見方に則ったマインドフルネスで「ピュアマインドフルネス」と呼ばれるものです。

ピュアマインドフルネスは、日常生活の中で、心の状態や体の動き(たとえば、掃除するときの手や目線の動きにまで)にじっくり意識を広げて観察していきます。

そこから、生きていることの奇跡や、世界があることへの感謝の心が育まれ、思い込みや囚われている事柄などから、自由になれることを目指して行なわれます。

マインドフルネスによる気づきに満ちた生活、つまり手段というより「人としてのあり方の追求」に近いのが、このピュアマインドフルネスです。

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もう一つは「臨床マインドフルネス」と呼ばれるもの。

脳科学のエビデンスに則って心身障害治療を目的に研究を進めた「手段」としてのマインドフルネスです。うつ障害の治療やストレス低減、痛みの感じ方を低減させるなど、その用途は多様です。

新世代の認知行動療法・マインドフルネスストレス認知療法(MSBR)を始めとし、マインドフルネス認知療法(MBCT)、弁証法的行動療法(DBT)が有名です。おもに専門セラピストの誘導によってクライアントの情動調性を図る「誘導型のマインドフルネス」になります。

ですが最近では、もっとライトなマインドフルネスとの付き合い方として、マインドフルネスに基づいた介入(MBI)がポピュラーになってきています。教育現場やビジネス場面での集中力・ひらめき力アップなどへのマインドフルネス活用が、近年注目されている分野です。Googleが取り入れたのがこれでした。

よく考えてみると、スポーツの試合や音楽のコンクールなどのまえ、緊張と向き合うために深呼吸したり、壁に向かって目を閉じて自分と向き合ったりしていたのも、マインドフルネスだったのですね。それが科学的に効果が実証され、より効率よく効果的に進められる方法として確立されてきた、ということです。

 

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現代のマインドフルネスの課題

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こうしてマインドフルネスが「体系化」されていく中、目的のためにその方法も部分的に切り離されて使われるようになりました。

もともとマインドフルネスの基盤は、八正道の正定と並んで、心の安定を目指す「定(落ち着き)」のカテゴリーに統合されています。八正道はこの「定」以外に「戒(適切な行動)」、および「慧(健全な思考)」を含む三種類のカテゴリーから成り立ち、合わせて「三学」と呼ばれます。

もとはこの「戒、定、慧」の修練と実践によって充実した生活と豊かな人間性の育成が可能となりバランスが整うものなのですが、現在人気を博したマインドフルネスでは、上述のように「定」が部分的に使われ、バランスが取れていません。そのため、そこから生じる危険性が専門家の間で懸念されています。

マインドフルネスの誤解

ここで、マインドフルネスを実践するにあたり、陥りがちな誤解を挙げてみます。

  1. マインドフルネスの誇大視:マインドフルネスの効果量は中程度
  2. マインドフルネスは万能: マインドフルネスを万能薬と捉える(人間関係、仕事もうまくいく、病気も治る、人格もよくなる、すべて成功する)
    (引用:1、2ともに、飯塚まり 著『進化するマインドフルネス ウェルビーイングへと続く道』より)
  3. 瞑想難民:瞑想の基本となる〈微細な感覚を丁寧に観察することで思考を手放す〉ことが初心者には難しく、指導者から『丁寧に観察しろ』『何も考えるな』など言われたことを体得できない間はかえって混乱し、うまく出来ない自分を責めてしまう(参考:ウ・ジョーティカ 著/魚川 祐司 訳.『自由への旅』より)

この勘違いから、思ったとおりの効果が得られず、失望し、精神状態の悪化を引き起こすケースもあるそうです。

もともと悟りを目的とした瞑想では、煩悩を手放すことも目指しているので、快楽を求める意欲が減退するのも当然の現象です。

大切なのは、その目的と「瞑想が自分に与えるもの」を、はっきりと把握しておくこと。そのために、それぞれのマインドフルネスの特徴や効果を理解しておくことが重要です。

 

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マインドフルネスの副作用

また、マインドフルネス実践にはそれに伴う副作用もあります。禅瞑想で魔境と称される現象なのですが、つぎのような例があります。

不快感反応:ジャネット・リンドルとウィロビー・ブリトンらの実験では、参加者の28%が不快体験ありで、そのうち82%が「恐怖、不安、パラノイア」を感じている。
(飯塚まり『進化するマインドフルネス ウェルビーイングへと続く道』)

マインドフルネスによってトラウマ記憶の再体験があるのです。
フラグを見つけることは、トラウマ解消に大切なことではあるのですが、しかし実践する本人がそのことを理解していないと、ただつらいことや、怖いものが蘇ってきたことだけにフォーカスしてしまいがちです。

どんな瞑想法も魔法ではなくツールにすぎないということを、正しく認識することが大切です。心という繊細な生命現象に働きかける繊細なツールですから、瞑想者がそれを理解し、使いこなせるだけの能力と心構えが必要です。

「懸念」から「問題解決」へ、進化するマインドフルネス

しかし、上記のような副作用が理解できていれば、今度はそれが問題解決の糸口として使えます。最近では、マインドフルネスによる「慈しみを育てる方法(ラビング・カインドネス瞑想)」も開発されてきています。トラウマ症状やグリーフ、PTSD、自分を責める傾向が強いクライアントに効果的な方法として確立されてきています。

こうしてどんどん、研究も進んでいくのですね。

マインドフルネスを活用して、STAY HOMEからSTAY MYSELFへ

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今回の新型コロナ対策に限らず、環境を変えざるを得ないときや人生の岐路に立たされたとき、何より大切なのは自己と繋がっていることです。

今のようなタイミングでは、「現実世界へのスムーズな戻り・新しい環境への適応」のためにマインドフルネスは大変効果的です。

中には、自粛生活が自分を見つめ直すよい機会になり、瞑想状態に似た感覚を持って過ごした方ももいらっしゃったのではないでしょうか。

内側の世界から現実社会に、どう精神状態を戻すか。こういうときこそマインドフルネスを活用してみてください。

禅寺では、身体を使う作業を行うこと、座禅で言えば作務といわれる日常作業にマインドフルネスを使います。日頃行なっている掃除、食事の準備、自分の動きを「丁寧に観察しながら」行なうのです。

一つひとつの動きやその時生じる音、自分の身体に感じる感覚や心の状態に集中してみてください。このとき大事なのは「ジャッジ・評価・判断しないこと」「ただ観察するだけ」「呼吸が止まらないように意識する」です。

マインドフルネスは訓練でもあります。スキルが上がれば、自己の内面に深く観察が行き届き、気づき繋がることで最も深遠な至福に達することができると言われています。

内なる自分をしっかりと見つめ、分離していた自己と繋がり直す。
まっすぐに伸びた一本の樹木のように、根が深く伸びれば、枝も高く、広く伸ばすことができます。

 

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新時代への飛躍期と言われる今、自己という幹をより一層伸ばすために、内面の自己とより深く繋がり、根を張りませんか。

自分に着地感がない、地に足がついてないなどと感じるときや、何か違和感を感じているとき、または、もどかしいとき…マインドフルネスを上手に使って「今ここ」に立ち返ることができれば、つぎへの一歩が力強く踏み出せることでしょう。

*1:サティパッターナ・スッタは、パーリ仏典経蔵長部の第22経にあり、ブッダが修行者に説いた、人生の苦悩から開放されるための経典です。自分の身体、感覚、心、心の中味、 それらをじっくり観察することで、自分から解放されるという教えです。(サティパッターナ・スッタ (Satipatthana Sutta) 大念住経 (大念処経)より)

 

 

参考資料:
大谷彰. 『マインドフルネス入門講義 (Japanese Edition)』
飯塚まり.『進化するマインドフルネス ウェルビーイングへと続く道』
『実行機能とマインドフルネス』 田中圭介 兵庫教育大学 ・杉 浦 義 典 広島大学
『マインドフルネス・トレーニングは実行機能の何を変えるのか』 ― 田中・杉浦論文へのコメント ― 関口貴裕 東京学芸大学https://www.jstage.jst.go.jp/article/sjpr/58/1/58_153/_pdf
ウ・ジョーティカ 著/魚川 祐司 訳.『自由への旅』
サティパッターナ・スッタ (Satipatthana Sutta) 大念住経 (大念処経)

 

 

 

 


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